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NIPT



◆NIPT(新型出生前診断)とは


NIPT(新型出生前診断)は、妊娠中の母体から採取された血液を分析して、胎児のダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)などの染色体異常を調べる検査です。この検査は、最新の技術を用いて、全ての染色体の数を検出することができ、部分的な欠損や重複も特定することが可能です。Non-Invasive Prenatal Genetic Testing(NIPT)と呼ばれるこの検査は、非侵襲的なスクリーニング検査で、一般的な染色体疾患のほか、性染色体の異常や微小欠失症なども調査することができます。また、性染色体の検査を通じて赤ちゃんの性別も判明することがあります。
NIPTは、従来の出生前診断に比べて感度・特異度が非常に高いことが特徴で、検査自体の精度はほぼ100%に近いと言われています。しかし、この検査は染色体異常の確定診断を行うものではなく、染色体疾患を有する可能性が高い(陽性)か低い(陰性)かを判定する非確定的な検査です。そのため、NIPTで陽性の結果が出た場合でも、確定検査として絨毛検査や羊水検査を受けることが推奨されます。また、稀に偽陽性や偽陰性の結果が出ることもあります。
この検査は、妊婦さんの血液中に存在する胎盤由来のDNAの断片を分析することによって行われます。胎盤は遺伝学的に胎児と同じであるため、このDNAを調べることで胎児の遺伝的な情報を得ることができます。現代の高速遺伝子解析技術の発展により、これらのDNA断片の解析が容易になりました。NIPTでは、母体の血液中に流れ込んだ胎盤由来のDNAの断片を解析し、染色体の異常があるかどうかを調べます。
妊娠している母体の血液中には胎盤由来のDNAの断片が浮遊しており、これを分析することで胎児の健康状態や特定の遺伝的疾患について早期に情報を得ることができるため、多くの妊婦にとって重要な選択肢となっています。
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◆NIPT(新型出生前診断)の原理


NIPT(新型出生前診断)の原理は、妊娠中の母体血液中に存在する胎児由来のDNA断片を利用して染色体疾患の有無を調べることにあります。この検査では、母体由来ではなく、胎児由来のDNAが分析の対象となります。具体的には、血液中に流れ出る胎盤由来のcell free DNA(cfDNA)を採取し、これをシークエンサーという機械で詳細に解析します。このcfDNAは、染色体疾患を持つ可能性があるかを検出するのに用いられます。

シークエンサーはDNAの塩基配列を読み取る装置で、最新の技術では次世代シークエンサー(NGS)が使用されます。この技術では、DNAのA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類の塩基配列を正確に読み取ります。塩基は基本的にペアで存在し(AとT、GとCが対になる)、これがDNAの二重らせん構造を形成します。シークエンサーは、抽出されたDNAの塩基配列を一つずつ読み取り、遺伝子異常を特定します。

従来のシークエンサーは一度に一つのDNA配列しか読み取れないため、時間と労力がかかりました。しかし、NGS技術ではDNAライブラリを作成し、一度に数百万から数十億単位の塩基配列を読み取ることが可能です。この技術により、少量のDNAからも高速で正確に塩基配列を解析することができ、胎児由来のcfDNAのような微量のDNAサンプルでも染色体異常を効率的に検出できるようになりました。

NIPTの解析方法としては、MPS法(massively parallel sequencing)が標準的です。これはNGSに基づいた解析法で、得られた胎児由来のcfDNAを用いて、各染色体由来のDNA成分量を定量的に分析します。例えば、胎児が21トリソミーである場合、21番染色体由来のDNA量が通常の1.5倍になるという結果が得られます。
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厚生労働省 NIPT: noninvasive prenatal testing 無侵襲的出生前遺伝学的検査 引用


◆従来の出生前診断との比較


従来の出生前診断方法と比較して、NIPTは感度・特異度が非常に高く、精度が優れている点が特徴です。しかし、18トリソミーや13トリソミーにおける陽性的中率は21トリソミーよりも低くなる傾向にあります。また、偽陽性(検査結果は陽性だが実際には染色体異常がない場合)のリスクも存在します。そのため、NIPTで陽性反応が出た場合には、さらに絨毛検査や羊水検査などの確定検査を受けることが推奨されています。

◆微細染色体異常の検出


微小欠失症候群は、染色体の特定の位置で遺伝子が欠失することによって発生する疾患です。この症候群は非常に小規模な染色体の変化に起因し、その変化は少なくとも50万塩基から存在し、通常は200万から300万塩基配列の欠失によって生じるとされています。この染色体の欠失が起きる位置とサイズに応じて、症状の種類や重症度が異なりますが、多くの場合、精神遅滞や発達遅滞などの症状を引き起こす可能性があります。

微小欠失症候群の多くは自然発生的なもので、母体の年齢には大きく関連しないと言われています。これは、遺伝的な要素のみならず、環境的要因や偶発的な染色体の変化が原因で発症することを意味します。このため、若年から高齢に至るまで、いずれの年齢の妊婦においても発症する可能性があり、特定の年齢層の妊婦に限定して検査を行うことは適切ではないとされています。

微細染色体異常、特に微小欠失症候群の検出は一般的な診断施設では困難なことがありますが、当検査所では高度な遺伝子検査技術を用いてこれらの異常を検出することが可能です。したがって、微小欠失症候群の正確な診断と管理には、専門知識を持つ医療機関での検査が推奨されます。このような検査は、潜在的なリスクを早期に特定し、必要な医療介入や支援を提供する上で重要な役割を果たします。


◆NIPTのメリットとデメリット

メリット

デメリット



◆留意点

NIPTは確定検査ではなく、スクリーニング検査であることを理解することが重要です。陽性反応が出た場合、確定検査を受ける必要があります。