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出生前診断の種類

出生前診断の種類

胎児に先天的異常がないかを調べる出生前診断には、NIPT(新型出生前診断)以外にもいくつかの種類が存在します。
その中でも、「非確定検査」と「確定検査」がありますが、各々どういった検査であり特徴は何なのか、いつ頃実施するのかなどをご紹介します。

非確定検査と確定検査

先述のとおり、出生前診断には非確定検査と確定検査の2種類があります。
簡単に表現すると、その名の通り、非確定検査はあくまで胎児の状態の目安となる検査(とはいえ精度がかなり高いものもあります)であり、確定検査は、胎児の状態を100%診断することのできる検査です。
以下で具体的な検査の種類と内容をご説明しますので、出生前診断に興味のある方は確認してください。

非確定検査

非確定検査は、超音波(エコー)や採血のみで検査を行うため、流産のリスクを高めることがありません。
検査の種類によっては、妊娠初期から検査を行うことができます。
従来の非確定検査である母体血清マーカーやコンバインド検査はあまり精度が高くありませんでしたが、近年開発されたNIPT(新型出生前診断)は採血のみでかなりの精度を誇ります。

ただし、非確定検査で「染色体異常の可能性がある」という陽性結果が出ても、その診断は確定ではないため、希望があれば羊水検査や絨毛検査などの確定検査を受けることができます。

母体血清マーカー(クワトロ検査)

母体血清マーカー検査では、母体から血液を採取し、胎児由来の4つのタンパク質(4つの血清マーカー)を解析します。
これにより、ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、開放性二分脊椎症の可能性がないかを調べることができるのです。

これらの血清マーカーの値は、妊娠週数がすすむにつれて変動しますが、胎児が検査の対象疾患である場合は異常値を示します。

検査結果については、母体年齢固有の確立・妊娠週数による4つのマーカーの変動・母体の体重・家族歴・1型糖尿病の有無などを加味して判定します。
検査時期は主に15~18週で、結果が出るまでには約2週間かかります。

コンバインド検査

コンバインド検査は、超音波と採血の組み合わせで結果を診断する検査です。
2つの検査を組み合わせることにより、ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)の診断精度を上げます。

超音波検査では、NTという胎児のうなじのむくみを測定し、採血では、胎盤由来の2つのタンパク成分(2つの血清マーカー)の値を測定します。

コンバインド検査の結果は、母体年齢固有の確立・NT測定とタンパク成分の値・妊娠週数・母体の体重・家族歴・1型糖尿病の有無など、母体血清マーカー検査と似たような項目から結果を診断します。
検査当日の胎児の姿勢によっては、超音波検査ができないことがあるのが注意点です。
検査時期は11~13週で、結果が出るまでには約2週間かかります。

NIPT(新型出生前診断)

母体の血中には、胎児に由来するDNAの断片が存在しています。
この検査では、そのDNAの断片を診断することで、ダウン 症候群(21トリソミー)とエドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)の3つの可能性を測定することができるのです。

NIPT(新型出生前診断)ではまず、採血でひとつひとつのDNA断片の情報を解析します。
次に、それらのDNA断片の何番染色体由来の量的な割合をみることで、特定の染色体の変化を洗い出し、標準値と比較することで陽性であるか陰性であるかを判断する流れです。

例えば通常21番染色体は2本ですが、胎児がダウン症候群であった場合は3本になります。
すると胎児の21番染色体の割合は通常の1.5倍含まれるため、検査結果が陽性となります。

NIPT(新型出生前診断)の検査精度はかなり高いですが、確率を予測するものであり、診断を確定するものではありません。
よって、診断を確定させるためには羊水検査や絨毛検査を受ける必要があります。

確定検査

あくまで目安であり、確率を調べるための非確定検査に対して、診断を確定するのが確定検査です。
胎児に染色体異常が起きてないかを確実に知ることができますが、お腹に針を刺して羊水や絨毛を取るので、流死産のリスクがあります。その確率は絨毛(1/100)~羊水(1/300)です。

上記のようなリスクが存在するため、確定検査ではなくてリスクのない非確定検査をすすめる医療機関も多いです。
どうしても診断を確定させたいという強い思いがあるならば、医師とよく相談の上で検査を受けるようにしましょう。

羊水検査

子宮内の羊水には、胎児に由来する細胞が存在しています。
羊水検査は、超音波画像でお腹の中の様子を観察しながら、母体のお腹に針を刺して羊水を採取し、その中の胎児由来の細胞を培養して染色体の形と数の変化を確認する検査です。

羊水検査は、染色体疾患全般に対応しています。
検査時期は15~16週以降で、検体採取から結果が出るまで約2週間かかります。

先述のとおり、羊水検査はお腹に針を刺して羊水を採取するため、多くのリスクが伴います。
破水・出血・子宮内感染・早産・羊水塞栓症・穿刺による母体障害(血管や腸管など)などの合併症が生じる危険性があります。
また、約300人に1人の割合で流産や死産の可能性があるため、受検には十分な注意と検討が必要です。

さらに、検査できる項目も限られているため、たとえダウン症候群(21トリソミー)とエドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)の可能性が検出されず正常だと診断されても、他の心疾患などの病気を持って産まれることもあり得ます。

絨毛検査

絨毛検査の「絨毛」とは、将来胎盤となる部分を指します。
絨毛検査では、超音波検査で母体のお腹の中を観察しながら、お腹に針を刺して絨毛細胞を採取し、染色体の形と数の変化を確認することができるのです。

絨毛検査も羊水検査同様に、染色体疾患全般の有無を調べることができます。

検査時期は11~14週で、検査結果が出るまでは約2~3週間かかるところが多いようです。

また、リスクについても羊水検査と同様です。

お腹に針を刺して行う検査であるため、破水・出血・子宮内感染・早産・穿刺による母体障害(血管や腸管など)などの合併症を引き起こすリスクがあります。

さらに、約100人に1人の割合で死産に至る可能性もあります。
羊水検査よりも死産のリスクが高いため、この検査をすすんで行う医療機関は少ないです。

また、こちらも羊水検査同様、検査には限界があります。
胎児の状態を正常に反映しないことがあり、具体的には胎盤限局性モザイク(胎児は正常なのに、胎盤だけ染色体の変化を持つ細胞が混在している)と呼ばれる状態が約1%存在します。
この場合、検査結果が陽性であっても、産まれてくる子は染色体疾患を持たない場合があります。
そして、検査できる項目が限られているため、検査結果が正常でも心疾患などの他の疾患を持って産まれてくることもあります。

ここまで様々な出生前診断についてご説明してきましたが、リスクなく行える検査結果は目安であったり、染色体疾患の有無を確定診断することができても重大なリスクがついて回ったり、染色体疾患の診断については網羅しているが検査範囲に限界があったりと、すべての心配事を払拭できる「完全」な出生前診断は存在しません。
繰り返しになりますが、出生前診断を受ける際は夫婦間でよく話し合い、医師から詳細な説明を受け、熟考の末に受検の決断するようにしましょう。

NIPT(新型出生前診断)の的中率

出生前診断として選択する女性が多くなってきた「NIPT(新型出生前診断)」にフォーカスして、診断結果の的中率を確認していきましょう。
NIPT(新型出生前診断)の最大の特徴と言っても過言ではないのが、その精度の高さです。

ダウン症候群(21トリソミー)

例えば、下の表は妊娠12週でNIPT(感度99.1%)を受けた場合の、ダウン症候群(21トリソミー)の陰性的中率と陽性的中率です。

母親の年齢 疾患頻度 陽性的中率 陰性的中率
30歳 1/626(0.16%) 61.3% 99.99%
35歳 1/249(0.40%) 80.0% 99.99%
40歳 1/68(1.47%) 93.7% 99.99%
45歳 1/16(6.25%) 98.5% 99.99%

ここで言う疾患頻度とは、妊娠12週の母親がダウン症候群(21トリソミー)の子を妊娠している確率です。
陽性的中率とは、NIPT(新型出生前診断)の結果が陽性で、生まれてくる子が本当にダウン症候群(21トリソミー)である確率を指します。
陰性的中率はその逆です。

母親の年齢が高いほど、疾患頻度も陽性的中率も高くなることがわかります。

陽性的中率は、例えば30歳を例に挙げると疾患頻度0.16%に対して61.3%とかなり高く、陰性的中率にいたっては99.99%です。
NIPT(新型出生前診断)がかなりの精度だということがおわかりいただけるかと思います。

エドワーズ症候群(18トリソミー)

次はエドワーズ症候群(18トリソミー)の的中率を確認してみましょう。
エドワーズ症候群(18トリソミー)は、ダウン症候群よりも症状が重い疾患です。
そのため、妊娠中に胎児が罹患している確率・出生頻度ともにダウン症候群(21トリソミー)よりも低い確率となります。

NIPT(新型出生前診断)のエドワーズ症候群(18トリソミー)の感度は99.9%、
です。
下の表は妊娠16週の場合のエドワーズ症候群(18トリソミー)の陰性的中率と陽性的中率です。

母親の年齢 疾患頻度 陽性的中率 陰性的中率
30歳 1/2100(0.05%) 10.6% 99.99%
35歳 1/840(0.12%) 22.9% 99.99%
40歳 1/230(0.43%) 52.2% 99.99%

ダウン症候群(21トリソミー)同様に、母親の年齢が上がるほど疾患頻度も陽性的中率も上がります。
ただし、陰性的中率は99.99%を誇っています。

パトウ症候群(13トリソミー)

最後に、パトウ症候群(13トリソミー)の的中率を見てみましょう。
パトウ候群(13トリソミー)は、ダウン症候群(21トリソミー)やエドワーズ症候群(18トリソミー)よりもさらに重い症状の疾患です。
そのため、妊娠中に胎児が罹患している確率・出生頻度ともにダウン症候群(21トリソミー)やエドワーズ症候群(18トリソミー)よりも低くなっています。

NIPT(新型出生前診断)のパトウ症候群(13トリソミー)の感度は91.7%、です。

母親の年齢 疾患頻度 陽性的中率 陰性的中率
30歳 1/626(0.16%) 61.3% 99.99%
35歳 1/249(0.40%) 80.0% 99.99%
40歳 1/68(1.47%) 93.7% 99.99%

パトウ症候群(13トリソミー)は疾患頻度が低いので、ダウン症候群(21トリソミー)やエドワーズ症候群(18トリソミー)よりもさらに陽性的中率は下がります。

ただ、母親の年齢に対する疾患頻度や陽性的中率はダウン症候群(21トリソミー)やエドワーズ症候群(18トリソミー)と同様に上昇する傾向です。

NIPT(新型出生前診断)を受ける方にとって、的中率は非常に重要です。

特にNIPT(新型出生前診断)は、ダウン症候群(21トリソミー)とエドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)いずれにおいても陰性的中率が99.99%です。

よって、陰性と判定された場合はほとんどの確立で染色体異常がないと判断することができます。

採血のみで流産・死産のリスクがなく、さらに的中率が高いことから、NIPT(新型出生前診断)を受検する女性が世界的に増えています。

ただし、見てわかる通りその的中率は「100%」ではありません。診断結果は「確実」ではないということです。
これにより、NIPT(新型出生前診断)は非確定検査に分類されるのです。

また、これだけ精度の高いNIPT(新型出生前診断)でも、ごく稀に誤診断となる場合があります。
染色体異常が生じていないのにも関わらず陽性と判断されたり、逆に染色体異常が生じているのにも関わらず陰性と判断されたりする偽陽性・偽陰性が存在します。

新しくて精度が高いNIPT(新型出生前診断)は海外ではすでに一般的に普及しており、妊婦の間ではポピュラーな検査となっています。
日本でもこの検査を検討する女性が増えてきていますが、精度が高いからといって、結果を過信して一喜一憂してしまうのは、妊娠中の身体にも良いことではありません。

検査結果による影響やその後の判断など、場合によっては重い決断になってしまうこともあります。

「リスクヘッジ」として安易に出生前検査を受けることは日本では少々疎まれる風潮がありますが、我が子の重大な疾患は、夫婦の将来にも、その子の将来にも少なからず影響を及ぼします。

受検を検討されている場合は、よく夫婦間で話し合いを重ね、専門医からの詳細な説明を受け、メリット・デメリットをしっかりと理解した上で検査を受けるようにしましょう。