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家族の選択、新型出生前診断と人工妊娠中絶について

家族の選択、新型出生前診断と人工妊娠中絶について

日本で2016年人工妊娠中絶をおこなった妊婦さんは約16万8千件です。そのうちの半分は経済的理由などで人工中絶をおこなっています。
内訳は20~34歳が全体の63%を占めており、20歳未満が約9%、35歳以降約23%です。

意外に多い人工妊娠中絶

日本で2016年人工妊娠中絶をおこなった妊婦さんは約16万8千件です。そのうちの半分は経済的理由などで人工中絶をおこなっています。内訳は20~34歳が全体の63%を占めており、20歳未満が約9%、35歳以降約23%です。

人工妊娠中絶をおこなえるのは、指定を受けた産婦人科の医師のみです。1948年制定の優生保護法(母体保護法)は、望まぬ妊娠や経済的理由に限り中絶を合法化していました。ただし、妊娠22週を超えた場合胎児は母体外での生存が可能なため法的には認められておりません。20代以上では人工妊娠中絶の理由として目立つのが、経済的な理由です。

かつての優生保護法は、親や子供の遺伝性の病気など中絶の理由に認めていましたが、1996年施行の母体保護法で削除されました。21週以前であっても、胎児の異常を理由に中絶は認められていないのです。

ところが、「羊水検査を受け、ダウン症などの障害がわかると21週以前だったら中絶できる」と考えている妊婦さんが多いと思います。国内で新型出生前診断が2013年に始まり検査を受けています。この検査は年々認知度も上がり、検査を受ける患者さんが増えています。

年間約100万人の出生が報告されていますが、そのうちの1%にNIPTで異常が出た場合を考えてみましょう。陽性の人全員が中絶した場合に、その中絶数は1万人となります。現在17万人の人たちが、望まぬ妊娠や経済的理由で中絶を行なっています。それに対して、この1万人が多いのか少ないのかは人によって考え方が違うとおもいますが、日本産婦人科学会は17万人の中絶については放置しており、実際に中絶を行なっているのは産婦人科医です。NIPTの陽性患者に対して中絶が増えるからといって反対するのはこの数字から非合理と感じるのは筆者だけでしょうか?

家族の選択

新型出生前診断(母体血胎児染色体検査あるいはNIPT:無侵襲的出生前遺伝学的検査)で胎児に病気がわかったご夫婦の約95%が人工妊娠中絶を選ぶことから「安易な中絶が増えている」「命の選別」という批判がとても多いとのことです。障害児が生まれると経済的にも精神的にも負担が増えるということから、経済的・身体的のどちらかの理由が当てはまれば、合法とされ公的には人工中絶がおこなわれます。

安易な中絶をするご夫婦はどこにも存在しません。悩みに悩んで選択をしています。特に妊婦さんの悲しみ、苦しみははかり知れず、病気で死産で生まれていた胎児と変わらない思いをしています。また、次の子どもを妊娠するにも決意がいります。「安易に中絶をしている」、「命の選別をしている」などということはけしてないと思います。

それが、病気のある赤ちゃんなら中絶してもしかたがないという考えが一般的になると、今生きている障害を持った人たちのみならず、そのご家族も傷つけてしまうことになります。障害のある方ご自身が「自分は生まれてきてはいけなかったのか」と自身の命を否定されたように感じるからです。

その一方で、妊娠初期に18トリソミーと分かった場合おなかの中でしか生きられない場合が多く、母体を優先させるために帝王切開をさけるといわれる場合があるようです。これは、中絶と同じようなことだという見方もあります。病院やご自宅で過ごされているお子さんも沢山いらっしゃいます。こちらも命を否定されているように感じるのではないでしょうか。

出生前診断の今後について

出生前診断は技術も大きく進み、欧米では次の世代の出生前診断が始まっています。新型出生前診断が海外では新型ではなくなりつつある中で、日本はこの新型出生前診断を広めないようにする理由はないのではないでしょうか。

新型出生前診断を受けるご夫婦は何の病気も持たず生まれてきてほしい。おなかの中にいる児の出生後を想像しながら、生まれてくるまでの間を楽しみに待っています。

これは、病気であろうとなかろうと親なら誰もが願っていることです。新型出生前診断検査を受けるにあたり、もしも病気が見つかったらどうするかを十分にご夫婦で話し合ってもらいたいと思います。

もし病気が見つかった場合のことを考えて検査を受けてほしいと思いますし、生む選択をしたときは、生まれるまでの準備期間でいかに生まれてきた子とご家族が幸せに生活ができるかを夫婦で話し合って生まれるまでの環境つくりや生まれてからの環境作りができたら少しはみかたも変わってくるのではないでしょうか。