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新型コロナウイルスのワクチン最新情報をカンタンに説明(2021年6月)

新型コロナウイルスのワクチン最新情報をカンタンに説明

『いろんな会社のワクチンがあるけど、違いは何?』 『接種したら、ワクチンはどれくらい効いているの?』 『なぜ、インド型(デルタ)に怯えてるんだろう?』 このような疑問を解決する記事です。
公的機関や研究所などの一次情報を中心に、信ぴょう性の高い情報をまとめました。

ワクチンの理解は、あなたの健康や資産を守ります

ワクチンの正しい知識は、あなたの資産や健康を守ります。

なぜなら、新型コロナウイルスに関連した詐欺被害が増えているからです。

たとえば、日本では国民生活センターに多くの問い合わせが増加しています。

米国では、偽治療薬も警戒されています。

本記事を読み、正しい知識を得ようとしてくれているあなたに、絶対騙されて欲しくありません。

ワクチンに対する正しい知識は、あなたが未承認薬や詐欺を回避するのに役立つでしょう。

日本で承認されているワクチンは3種類(2021年6月)

2021年6月で、

  • ファイザー/BIONTECH社のワクチン
  • アストラゼネカ社のワクチン
  • モデルナ社のワクチン

の3種類のワクチンが、日本で承認されています。

最初に接種されはじめたのは、ファイザー/BIONTECH社製のワクチンです。

2021年2月17日より、医療従事者を中心に接種が開始されました。

2021年5月21日には、モデルナ社とアストラゼネカ社のワクチンが承認されました。

2021年5月24日より、モデルナ社のワクチンは2021年5月24日より接種が開始されている状況です。

後述しますが、ファイザー/BIONTECH社のワクチンとモデルナ社のワクチンは、mRNAワクチン。

アストラゼネカ社のワクチンはウイルスベクターワクチンと呼ばれており、mRNAワクチンとは製法が異なるものです。

ワクチン接種で血栓ができるといわれているのは、アストラゼネカ社のワクチン。

さらに、最近メディアでよく目にするジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは、申請をしている段階で、まだ供給されていません。

【ワクチンのしくみ】身体に抗体を作らせるために接種する

日本で承認されているワクチンは、【ヒトの身体に抗体を作らせる】目的で接種されます。

ヒトの身体の中にウイルスに対する抗体があると、ヒトは新型コロナウイルス感染症を発症しづらくなるからです。

抗体とは、ウイルスが身体の中にはいったときに、ウイルスを無効化するタンパク質。

3種のワクチンの目的は【ヒトの身体に抗体を作らせる】ですが、その目的の達成方法が異なります。

目的の達成方法は、mRNA(メッセンジャーRNA)とウイルスベクターの2つ。

本項目では、mRNAワクチンとウイルスベクターのワクチンのしくみについて解説します。

抗体を作るには、感染・発症が必須ではない

ヒトの身体に抗体を作らせる条件は、新型コロナウイルスに感染・発症すること。

しかし、そのために新型コロナウイルスに感染・発症したくはないですよね。

新型コロナウイルスに感染・発症せずに、ヒトの身体に抗体を作らせる方法を模索し産みだされたのが、ワクチンです。

つまり、身体が抗体を作るには、必ずしも新型コロナウイルスの全部が必要というわけではありません。

ワクチン接種は、身体にスパイクタンパクを作らせるため

ワクチンは、スパイクタンパク※1の設計図をヒトの身体の中へいれる方法。

新型コロナウイルスに対する抗体を作るには、ヒトの身体は新型コロナウイルスのスパイクタンパクを認識する必要があります。

そのため、ヒトの身体の中にスパイクタンパクをいれなければいけません。

スパイクタンパクの設計図を身体の中へいれると、ヒトの身体が設計図を元にスパイクタンパクを作ります。

そして、スパイクタンパクを目印に、ヒトの身体は抗体を作り、新型コロナウイルスの感染・発症を防げるのです。

※1 スパイクタンパク:新型コロナウイルスの表面にあるタンパク質。スパイクタンパクがあるから、ウイルスはヒトに感染できます。

mRNAワクチンとウイルスベクターワクチンの違いは、運び方

ヒトの身体にスパイクタンパクの設計図をいれ、抗体を作らせるためのツールがワクチンでした。

mRNAワクチンとウイルスベクターワクチン違いは、設計図の運び方です。

ヒトの細胞まで運ばなければ、設計図からスパイクタンパクは作られません。

mRNAワクチンは、脂質の膜(脂質ナノ粒子)の中にスパイクタンパクの情報。

ウイルスベクターワクチンは、チンパンジーアデノウイルスの中にスパイクタンパクの情報をいれて、細胞まで設計図を運びます。

mRNAワクチンのメリット・デメリット

mRNAのメリットは

  • 生産に時間がかからない
  • ワクチンを接種しても、新型コロナウイルス感染症にならない
  • 自分のDNAが、mRNAにより書き換えられる心配がない

生産時間が短くなる理由は、従来のワクチンと違いウイルスを培養しなくていいからです。

mRNAワクチンには、新型コロナウイルス表面のスパイクタンパクの情報のみがふくまれます。

その情報だけでは、新型コロナウイルス感染症で現れる症状がでません。

mRNAワクチンは数日で分解されてしまいます。

ヒトの中に留まらないので、スパイクタンパクの情報はヒトのDNAに取り込まれないといわれています。

しかし、デメリットとして、

  • 意図しない副作用があるかもしれない
  • 保管・管理が大変

があげられています。

ウイルスベクターワクチンのメリット・デメリット

ウイルスベクターワクチンのメリットは、

  • ワクチンを接種しても、新型コロナウイルス感染症にならない
  • mRNAよりも、保管・管理がしやすい

対し、デメリットは、ウイルスベクターに免疫ができてしまうケースです。

そうなると、ヒトが抗体を作る前に、ワクチンが身体から排除されてしまいます。

さらに、1度目の接種で免疫ができてしまったら、2度目の接種も身体から排除され、ワクチンの効果を十分に得られない可能性があります。

ワクチンの効果・持続時間

3種ワクチンの有効率はどれも高い値を示します。

具体的には

  • ファイザー/BIONTECH社は94.6%
  • モデルナ社は94.1%
  • アストラゼネカ社は70.4%

ワクチンの持続時間は、6ヵ月程度続くといわれています。

モデルナ社が公開したデータによれば、2回目の接種以降から180日後でも、抗体が身体の中に残っているとあります。

臨床試験をした人の6ヵ月後に、ファイザー社も発症予防効果を調べました。

結果は発症予防効果が91.3%と、高い効果を維持しているとあります。

ワクチンの種類によってどれくらいの差があるか

mRNAワクチンは90%以上の有効率。

ウイルスベクターワクチンも70%を超え、インフルエンザワクチンよりも高い有効率を示しています。

本項目では有効率以外で、承認された3種のワクチン、

  • ファイザー/BIONTECH社(mRNAワクチン)
  • モデルナ社(mRNAワクチン)
  • アストラゼネカ社(ウイルスベクターワクチン)

にどんな違いがあるか、それぞれ説明していきます。

製法の違い

モデルナ社とファイザー/BIONTECH社

スパイクタンパクの情報を、脂質の膜に包みます。

なぜなら、mRNAは非常に不安定で、壊れやすいからです。

脂質の膜には、mRNAを守らせる役割があります。

アストラゼネカ社

チンパンジーのアデノウイルスの中にスパイクタンパクの情報を組みこみます。

アデノウイルスはヒトの身体の中で増えないように処理。

チンパンジーのアデノウイルスを使う理由は、ヒトが免疫をもっていないからです。

ヒトのアデノウイルスに対して、ヒトは免疫をもっているのでアデノウイルスを排除しようとします。

しかし、チンパンジーアデノウイルスの場合は排除されず、細胞の中には侵入できるのです。

取扱方法

mRNAワクチンとウイルスベクターワクチンは保存できる温度が違います。

mRNAワクチンの方がデリケートで扱いにくく、低い温度での保存が必要です。

2~8℃だと、ファイザー/BIONTECH社のワクチンは5日保存可能で、モデルナ社のワクチンは30日程度。

さらに、長期の保存をするには-20℃以下で保存する必要があります。

対して、アストラゼネカ社のワクチン(ウイルスベクターワクチン)は、2~8℃で最大6ヵ月の保存が可能。

インフルエンザワクチンと管理が似ているので、普及しやすいと見込まれています。

副反応

3種のワクチンで共通している副反応は、

  • 接種部位の痛み
  • 倦怠感
  • 頭痛
  • 発熱
  • 筋肉痛

上記にくわえ、ファイザー/BIONTECH社とモデルナ社のワクチンでは、アナフィラキシーショックも確認されています。

アストラゼネカ社のワクチンの稀な副反応、『血栓』があります。

血栓とは、血液が固まったり、ドロドロになったりしたもの。

血液の中に血栓が存在すると、血液の流れが悪くなり、さまざまな疾患へつながります。

アストラゼネカ社のワクチンから起こる、血栓とは

アストラゼネカ社のワクチンを接種すると、TTSが稀に起こります。

TTSとは、Thrombosis with Thrombocytopenia Syndromeで、ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症。

TTSはワクチン接種後より、4~28日に発症するといわれ、

  • 血栓症
  • 血小板減少症
  • 凝固線溶系マーカー異常
  • 抗血小板第4因子抗体の検出

が特徴とされています。

TTSの発生頻度は低く、1万人~10万人に1人の割合です。

TTSによって、出血や脳浮腫を伴う重症脳静脈血栓症が症状として見られ、致死率がとても高くなっています。

接種対象者

モデルナ社とアストラゼネカ社のワクチンは18歳以上。

2021年6月から、ファイザー社は12歳以上が接種対象になりました。

ワクチンの開発・認可の流れとプロセス

ワクチンは開発したら、すぐに流通できるわけではありません。

長い年月をかけて、私達に供給されます。

しかし、従来のワクチンと比較し、新型コロナウイルスのワクチンは短時間で供給に至りました。

本項目では、新型コロナウイルスワクチンと従来のワクチンとの違いを説明します。

従来のワクチンの供給までの流れ

ワクチン供給までは、

  • 基礎研究
  • 非臨床試験
  • 臨床試験
  • 薬事申請・審査
  • 承認

が大まかな流れです。

基礎研究とは、何を使ってワクチンを完成させるかを決める段階です。

従来は、ウイルスを弱くし増殖させ、ワクチンとしていました(弱毒化ワクチン、不活化ワクチン)

これを実現するには、ウイルスを増殖させるなど、多く時間がかかるものでした。

非臨床試験とは、基礎研究によって完成させたワクチンを細胞や動物へ使い、結果をみる方法です。

この試験をもとに、ヒトへの投与量を大まかに決めていきます。

臨床試験とは、実際にヒトに接種する工程で、通常1相~3相の3段階です。

1相は少人数の健康なヒトに対し、投与します。

2相は、少人数のワクチンのターゲットになるヒトに対し、投与を開始します。

3相では、2相までに得られた結果をもとに、多数のワクチンのターゲットに投与を

し、結果を確認します。

一般に、治験と呼ばれるものです。

薬事申請・審査とは、臨床試験で得られたデータをもとに厚生労働省へ申請をします。

審査をするのは厚生労働省で、審査期間はおおよそ1年弱が平均です。

以上の工程を経て、ワクチンの使用が承認され、私達へ供給されてきました。

新型コロナウイルスのワクチンの流れ

従来のワクチンとの大きな違いは、それぞれの工程を同時並行でやり、期間短縮をおこなった点です。

新型コロナウイルスのワクチンでは基礎研究と臨床試験を同時にやり、薬事申請までの期間を短くしました。

次にmRNAワクチンは、基礎研究の段階を早く終えられます。

なぜなら、従来のようにウイルスを培養する期間がないからです。

さらに、厚生労働省は審査期間を従来のワクチンよりも短くしました。

ワクチンの生産に関しても、政府が開発企業に支援をして、速度をあげています。

開発企業のリスクを政府が負担して、研究開発と生産を並行させています。

『加速並行プラン』として、厚生労働省が新型コロナウイルスのワクチンを早期に実現させるための異例の流れです。

新型コロナウイルス(COVID-19)に感染すると、抗体ができる

ワクチンと同様に、新型コロナウイルスに感染しても抗体ができます。

しかし、厚生労働省の発表によると、『抗体はできるが、抗体ができる期間などは明らかになっていない』とありました。

抗体が身体の中へ留まり続ける期間に関し、いくつか報告があります。

横浜市立大学や日本医療研究開発機構からの報告によれば、3~6ヵ月は抗体が維持されるそうです。

一方で、抗体であっても、ウイルスの効果を失くす抗体ではなく、感染を増強させる抗体(感染増強抗体)が産生されると、大阪大学によって発表されています。

インド型(デルタ)がどうしてこんなに脅威なのか

インド型(デルタ)に対し、脅威を感じる理由は、

  • インドの医療崩壊の光景が、脅威を増幅させる
  • 動物実験では、病原性が従来のウイルスよりも高い
  • 特に日本人へ、インド型(デルタ)は感染力があがると示唆

インドの新規感染者数は1日平均30~40万人を超え、パンデミックでの死者数が30万人以上です。

医療現場では医療用酸素や薬品の数が足りない状態。

病原性に関して、ヒトではなくハムスターに対する実験をしました。

従来の新型コロナウイルスとインド型(デルタ)を、ハムスターに接種した実験です。

結果、従来の新型コロナウイルスよりも病原性が高いと報告されました。

インド型(デルタ)の特徴は【二重変異】です。

【二重変異】とは、新型コロナウイルスのスパイクタンパクに、L452RとE484Qの変異が同時に生じている事象。

【二重変異】はヒトの免疫から逃げる能力があるので、感染力が増すといわれています。

なぜ、日本人への感染力があがるのでしょう?

日本人の多くもつ免疫システムから、新型コロナウイルスが逃げるからです。

日本人の6割は、『HLA-A24』という白血球をもっています。

白血球は免疫を担う細胞で、『HLA-A24』は白血球の血液型。

つまり、インド型(デルタ)の【二重変異】は『HLA-A24』から逃げやすい能力をもつので、日本人の6割にとってインド型(デルタ)は感染力があがるとされています。

参考文献