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NIPTで早期発見できる性染色体異常「クラインフェルター症候群」

NIPTで早期発見できる性染色体異常「クラインフェルター症候群」"

減数分裂と性染色体異常をわかりやすい説明するため、クラインフェルター症候群を例にしました。
症状が目立ちにくいので、早期発見と早期治療にはNIPT(新型出生前診断)が適していることをこのページを通して知ってほしいです。

症状はわかりづらい。早期発見できる方法はNIPT(新型出生前診断)

クラインフェルター症候群は難病指定されています。
症状は、子供のころではわかりません。
不妊治療の来院がきっかけで、判明するケースが多くなります。

目にみえてわかりづらい症状とは以下です。

  • 高身長(極端ではない)無精子症
  • 男性ホルモンのテストステロンが分泌されない
  • 少々の学習障害
  • 言語発達遅滞
  • 二次性徴がみられにくい

これらは自覚症状で判断しづらく、全員に起こるとは限りません。
しかし、NIPT(新型出生前診断)で知っておくと、後述する合併症の予防へつながります。

自然妊娠が難しくても顕微授精

近年は無精子症と診断されても、顕微授精により子供を授かれるようになってきました。
顕微鏡下精巣内精子回収術で精子を回収できるからです。

無精子症と診断された人は、精巣にダメージを受けているので、精子をつくれません。

しかし、精巣にもダメージを受けていない部分があります。

顕微鏡でダメージを受けていない部分を発見し、そこから精子をとる作業が顕微鏡下精巣内精子回収術です。

回収した精子は顕微授精につかわれます。

減数分裂の失敗が染色体異常

《減数分裂が失敗した結果、性染色体の数が変わります。
性染色体の数が変化した影響が、クラインフェルター症候群です。》

減数分裂の失敗は、クラインフェルター症候群が起きる大部分の原因。

しかし、このような疑問がうまれないでしょうか?

「そもそも減数分裂って?」

「性染色体ってどんな染色体?」

「なにが起こると、失敗なの?」

これらの疑問を解決するための項目を以下に示します。

減数分裂とは

精子と卵子が受精する前に2回起こる分裂。
2回の分裂は、もっている染色体数を半分にします。
半分にする理由は、受精の度に染色体数が増えつづけないためです。

精子と卵子の染色体数が1本ずつだとすると、受精後は2本ですよね。
受精し子供ができ、その子供の染色体数も2本。
例えば、減数分裂をしないならどうでしょうか?
精子や卵子がそれぞれ染色体が2本ずつになりますよね。
染色体数2本の精子が、卵子(染色体数2本)と受精すると、4本に増えてしまいます。
次の代で染色体数は8本、また次の代では16、32、64。
ヒトの染色体数は46本なので、祖先が何代にも渡っていないことになってしまいませんか?

減数分裂の目的は精子と卵子をつくり、一定の染色体数を維持しながら次代へ受け継いでいくことになります。

なにをもって減数分裂の失敗とするのか

染色体が1本しか入れない細胞に、染色体が複数入ってしまうのが減数分裂の不分離です。減数分裂の不分離は、1回目の分裂と2回目の分裂のどちらにも起こりえます。

減数分裂が失敗しない場合、1つの細胞に入る染色体の数は1本です。
その細胞は精子や卵子へ変化します。

ヒトは受精したら、2本の染色体をもつのが正常です。

減数分裂が失敗した場合、1つの細胞に染色体が複数あります。
この染色体が受精すると、正常な数とは違いますよね。
これが性染色体異常の数の異常です。

染色体異常の種類について

受精後の性染色体数によって、呼ばれ方が違います。

染色体の数 呼称
モノソミー
ダイソミー
トリソミー
テトラソミー

ヒトにとって正常なのはダイソミー、クラインフェルター症候群はトリソミーとテトラソミーです。

例えば、減数分裂の不分離を男女に置き換える

減数分離の不分離をイメージしやすくするため、以下の条件に置き換えます。

  • 女性由来の染色体は女性。
  • 男性由来の染色体は男性。
  • 細胞は部屋。
  • 減数分裂は本来2回ですが、例では1回にしています。

①4人で遊んでいた女性達が帰宅しようとおもい、4人それぞれの部屋へ帰るつもりです。

②4人のうち2人が飲みなおしたいと考え、一緒の部屋に帰りました。

③そうなると2人いる部屋が1つ、1人いる部屋が2つ、誰もいない部屋が1つですよね。

④女性が2人いる部屋に同棲している男性が帰ってきました。

③が減数分裂の不分離。
④は受精し、トリソミーになった状態です。

この例では女性側が原因となりましたが、男性側が原因にもなります。

減数分裂の不分離は、なぜ悪いのか

物質が増えすぎてしまい、身体に不具合が起こるからです。

染色体の数が正常よりも多いと、遺伝子の発現量も増えます。
遺伝子の発現は、ホルモンなどタンパク質を中心とした物質をつくることです。

例えば、料理に置き換えてみましょう。

調味料は味付けに必須ですが、多すぎると味が台無しになってしまいますね。
おいしい料理には、調味料のバランスが大切です。

身体の中も一緒で、適度にさまざまな物質がバランスをとりながら、健康な身体を維持します。

染色体と性染色体の違い

性染色体は、染色体の1つです。
染色体は、性染色体と常染色体にわけられます。
ヒトの染色体数は、性染色体2本と常染色体44本です。
性染色体は性別の決定に関与し、それ以外を常染色体と呼ばれます。

性染色体はXとYで表現され、XYが男性でXXが女性。
XYやXXが正常な性染色体の形です。

クラインフェルター症候群は、男性のみ発症します。
Y染色体が1本以上、X染色体数が2本以上もつのが、クラインフェルター症候群の条件です。

性染色体異常の表記の仕方

多くの文献では、染色体の数と性染色体の表現型だけを表記されています。

性染色体異常で染色体数が47本になり、性染色体の表現型XXY。
これを文章で書くと大変なので、(47/XXY)で表記されます。

正常な性染色体の表現型は(46/XY)。
クラインフェルター症候群の性染色体異常は、(48/XXYY)もありますが、大部分は(47/XXY)です。

X染色体の数が多いと、なぜよくないのか

遺伝子の発現量が正常より増え、身体に不具合を起こすからです。

Xの数が2倍になっても、Xに含まれる遺伝子発現量すべてが2倍にはなりません。
ヒトやマウスのX染色体は、1本を除いて遺伝子の発現が抑制され、どのX染色体を残すのかはランダムです。

これをライオニゼーション(X染色体の不活化)といい、雄と雌の遺伝子発現量を同じにするためにおこなわれます。
性染色体異常が常染色体異常に比べ、生命の危険が少ないのはライオニゼーションのおかげです。

それならば問題がないようにおもえますよね。

しかし、遺伝子発現の抑制を受けない部分が存在します。
疑似常染色体領域(PAR)とよばれる部分が、抑制を受けません。
Xの数に比例し発現量が増えていくのは、PARに存在する遺伝子です。

クラインフェルター症候群の症状の1つに、高身長がありましたよね。
PARにはSHOX遺伝子があり、身長の高さに影響を与えます。
高身長の症状がでるのは、SHOX遺伝子の発現量が増えるからです。

減数分裂の失敗により、X染色体の数が変わります。
X染色体の数によって正常な遺伝子発現量にならず、身体にさまざまな症状がでるのがクラインフェルター症候群です。

NIPT(新型出生前診断)で早期に発見すると合併症の予防につながります

クラインフェルター症候群の症状は、さまざまな合併症を引き起こします。
NIPT(新型出生前診断)での早期発見と早期治療は、合併症の予防に効果的です。

性染色体異常は、治療なしでは症状を抑えられません。
クラインフェルター症候群だけでなく、性染色体異常は根本的に治せないので、治療は症状の緩和です。

クラインフェルター症候群の合併症を以下に示します。

①骨粗しょう症

②骨量低下

③筋力低下

④2型糖尿病

⑤悪性腫瘍(乳がんが多い)

このうち①~③は、男性ホルモンの低下で引き起こされる合併症です。
思春期から男性ホルモンをうち、合併症の予防対策をしましょう。
そのためには、NIPT(新型出生前診断)でクラインフェルター症候群であるかを知っておく必要があります。

④、⑤は、クラインフェルター症候群の患者さんが先天的になりやすい合併症です。
これらは生活習慣病ですよね。

NIPT(新型出生前診断)による早期発見で、幼児期から生活習慣を気をつけていくのが予防へつながります。

参考文献