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出生前診断を今後どのように広く受け入れるのか

出生前診断を今後どのように広く受け入れるのか

出生前診断を今後どのように広く受け入れるについての記事です。世間では、どのくらいNIPTが認識されているのでしょうか。
NIPTの調査等に関するワーキンググループの報告では、NIPTコンソーシアムの検査が行われている施設mp数は、2019年3月までの6年間においては86施設です。

新型出生前診断は、2013年に我が国が臨床研究に取り組み始めて、認可されている施設・認可されていない施設に関わらず広く行われています。

もちろんNIPTの実施をするかどうかは妊婦全員ではなく、妊婦それぞれの意思によるものだということが共通の考えです。

今後はNIPTがより低価格で行えることが予測され、さらに晩婚・晩産化がすすみ検査を考慮したいと考える高齢妊婦も増えます。結果として海外の国々のように、妊娠しているすべての女性に向けて、NIPTに関わるインフォメーションや検査を実施する状況になる可能性も高いです。

NIPTは、倫理的な問題等で世間で認識するまで慎重となる風潮があったものの、NIPTを広く認識し受け入れる必要のある段階にきています。

今回の記事においては、NIPTを今後どのように広く認識して受け入れていくのか解説します。

出生前診断はどのくらい広まっているのか

世間では、どのくらいNIPTが認識されているのでしょうか。

NIPTの調査等に関するワーキンググループの報告では、NIPTコンソーシアムの検査が行われている施設mp数は、2019年3月までの6年間においては86施設です。

検査データ結果の集計数は72,526例、施設数や一年間における実施件数もNIPTが始まった当初より年々増加傾向があります。

さらにNIPTは認可施設以外で実施することが可能で、2019年10月に確認できた認可施設数は92施設・無認可施設数は55施設となります。

施設数の増加と同様に、より低価格でNIPTが行える施設は増えることが予測されます。

出生前診断の実施を受けるか否かは妊婦個人の考えによる

日本ではNIPTの実施を受けた妊婦が増えても、世間に広くNIPTへの認知が広がっているとはいえないでしょう。

知識としてNIPTを知っていても、どんな検査で、胎児のどんな種類の異常がわかり、診断後は、その後の妊娠や治療にどんな選択肢が存在あるのか、NIPTが実施されるまではその状況が分からず、知識が不足して困るという人も多いのです。

日本では出生前診断を妊娠の継続を諦める可能性がある検査として捉えたり、NIPTにネガティブな印象を持ったりする人もいます。

根本の考え方は、NIPTの実施を受けるかは、妊婦それぞれが考えて決めるというスタンスです。NIPTの実施の有無はそれぞれの妊婦の考え方次第です。

出生前診断は今後ますます世間に広がる

日本産科婦人科学会が持つ出生前検査や診断の概念は、胎児がいずれかの疾患にかかっている場合や胎児に疾患がみられる可能性が高いと考える場合に、胎児の正確な病気を知るツールとして捉えています。

そのため、高齢で妊娠・出産を経験する女性が多い昨今は、高齢妊婦の多くが出生前診断の実施をするかどうかの対象となりえます。

ゆえに、NIPTは今後子供を産み育てる世代にとっては決して人ごとではないのです。

歴史をみれば、NIPTは2011年にアメリカに置いて臨床検査が始まり、日本では2013年に始まっています。

2018年では世界のNIPT実施件数は推定で1,000万件と言われており、何十社におよぶ検査会社が今現在、世界に存在しています。

日本ではNIPTは認可・非認可施設で検査が行われており、今後施設数の増加や検査費用の低価格化がすすめばNIPTの検査数はさらに増え、世間に広く浸透するのも容易に想像ができるわけです。

出生前診断を選択した人への支援体制の大切さ

NIPTがますます広がりを見せる中で、検査を受ける妊婦にとって大切なこととして以下を挙げます。

  • NIPTに関する適切で科学的根拠に基づいた情報提供を受けること
  • 検査の結果によってどんな選択肢があるのかを知る
  • 検査後の妊婦の意思決定を支えるサポートを受けられるかどうか

大切なのは検査や疾患に対する正しい情報の提供とそれらへの理解、そして遺伝カウンセリングといった検査前後の考えの決定を支えるサポート体制です。

最近は、その考えや意思決定を支えるサポートを行うNPO法人「親子の未来を考える会」の「胎児ホットライン」といった活動から情報の提供を受けられるのも注目です。

この会ではボランティアベースで営まれ、NIPT等を選択した妊婦が検査後の結果により妊娠継続をする・しないに関わらず中立な立場を持って関わるのが特徴となります。

「胎児ホットライン」では、妊娠中の胎児に先天性疾患が見つかった妊婦が、出産後にどのようなサポートが受けることができるのか等の今後の生活について様々な立場の人からアドバイスを受けられます。

その結果、出産後の生活をイメージしつつ、妊婦が自分の人生の歩み方を知ることができるのです。

今後、NIPT検査に関わらず胎児に疾患が見つかった妊婦が、治療の選択や出産後にどのようなサポートを受けるかどうかを自己決定するサポート体制がより広がっていくことが求められます。

胎児に治療をするという考え方

前述の「親子の未来を考える会」ではNIPT検査を選択した妊婦を支える立場にありますが、その背景として胎児が母親のお腹にいる間から受けられる「胎児治療」という考えがあります。

胎児治療は「胎児異常の出生前診断に基づき、母体の安全を確保しつつ、生まれる前の胎児に治療を行い、生後治療よりも効果の高い治療を行うという治療手技」のことです。*1

これは胎児をすでに医療の対象として考え、出生前診断検査後に必要があれば十分な情報提供の上で胎児に治療を行うものです。

現在でも行われる胎児治療は限られてはいますが、臨床に応用できる研究はすすみ、ゆえに胎児の疾患を早期に発見し治療を行い、今後予測される障害をより軽度にする可能性を考えるためにNIPT検査を行うことも十分ありうるということになります。

まとめ:新型出生前診断を広く受け入れていくために必要なこと

NIPT検査は今後日本で広く行われていくことは間違いありません。

倫理的な側面において、検査に賛成・反対・慎重に行うべきと様々な意見もあり、妊婦だけでなく社会全体でこの検査について理解を深めることが急務です。

海外の各国にも浸透しているNIPTを日本で広く受け入れていくために何が必要なのか、それをより深く考える段階にきています。

最優先して考えることは、妊婦を含めた家族の自己決定を支え、生まれてくる子供にとって最適な環境が整えられるかどうかです。

今回紹介した胎児治療の観点から、NIPTを受けて治療が必要な胎児に医療を施す可能性も選択すること、胎児に先天疾患があった場合の出産後のサポートも事前に知ることができることなど、NIPTを選択する妊婦へのサポート体制の充実が今後も求められています。

NIPTが日本で広がりを見せるなかでNIPTの適切な知識や情報の提供や検査前後の適切なフォローアップが実施される体制作りが急務といえます。

参考文献